島根大学教育学部紀要. 人文・社会科学

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島根大学教育学部紀要. 人文・社会科学 9
1975-12-25 発行

伊東静雄論 : その詩法について

Sizuo Ito : A Study of His Versification
上田 正行
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内容記述(抄録等)
 生前、『わびひとに与ふる哀歌』(昭10・10)『夏花』(同15・3)『春のいそぎ』(同18・9)『反響』(同22・11)という四つの詩集を刊行し、昭和拝情詩史の上であざやかな光芒を放った詩人、伊東静雄について、その詩法と精神の軌跡を解明したく思い筆を執った。
 一般的に言って伊東の詩の魅力はそのきびしい内在律にあると言える。特に第一詩集『わがひとに与ふる哀歌』についてその事が顕著である。この内在律は伊東が自らに強いた意識的なものであり、明確な方法意識の所産である点、伊東における詩法と言える。伊東にこの詩法を強いたものは何であったのか、というのが私の関心の中心であり、この観点から現実や時代の意味を考えてみたい。又、第一詩集にあったこのきびしい内在律は第二、第三詩集となるに従って次第に弛緩し崩壊して行く。詩人自身、「荘漢・脱落」という言葉で表現しているこの変容は何を意味するのか。それはある時代の一つの精神の崩壊であったのか、又は詩人にとっての新しい世界の始まりであったのか、その事を「日本への回帰」の視点より検討することで一人の詩人の時代受容史と精神史を跡づけたい