島根大学教育学部紀要. 人文・社会科学

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島根大学教育学部紀要. 人文・社会科学 33
1999-12-01 発行

小学校児童の骨密度と生活に関する研究

A Study on Bone Density and Life of Elementary School Children
猪野 郁子
山本 典子
金本 志津子
ファイル
内容記述(抄録等)
 人生80年といわれて久しくなるが、高齢になっても「生活の質(QOL)」を追求しながら楽しく人生を送るには,病気と上手に付き合うとともに高齢者に多い疾患とその合併症を予防することも必要であると思われる。なかでも、加齢に伴う骨の老化の代表的な疾患である「骨粗鬆症」は,寝たきりにつながりやすいため近年注目されている。
 骨粗鬆症には,さまざまな危険因子が関与し多因子的に発生するといわれている。
 骨は成長期から著しく発達し,20歳前後に最大値に達し,40歳位まではそのレベルが一定に保たれるが,その後減少することが知られている。若い時期では、遺伝子的因子やダイエットなどのライフスタイルが大きな意味を有し,更年期以降の女性では閉経が最大の危険因子となる。また,高齢者ではそれまでの生涯すべての要因が少しずつ複雑に影響しあっているという。
 従って,「骨粗鬆症」を予防するためには,人生のステージごとにどのような危険因子が存在し,骨密度の低下を促進しているのかを明らかにしていくことが重要であるが,成人期,特に閉経以降の女性を対象とした骨密度と骨密度を低下させうる危険因子との関連についての研究は数多く報告されているものの,幼少期を対象とした骨密度と骨密度の成長に関与する因子の調査研究はほとんどなされていないのが現状である。
 その理由として,成長は個人差が大きいこと,成長過程にある子どもにおいては骨の発達が現在どこまで進んでいるのか,これからどこまで成長するのか未知数であるため,現段階の骨密度で骨の発達をうんぬんすることはできないこと等が考えられる。しかし,長寿社会をむかえ,寝たきりをなくすためには,骨の成長を長い目でみていくことが必要であり,成長期の段階から定期的に骨密度測定を行い,骨密度を増加させるための適切な指導を行うことが重要な課題となると考えられる。
 また,成人においては,複合的に作用して骨密度を減少させる原因となる危険因子が明らかにされているが,成長期を対象とした実態調査は,ほとんどなされていないために,骨の成長を促す因子としてどういうものが考えられるかも明確になっていないのが実状である。よって,骨の成長に関する因子を明らかにすることも必要になるであろう。
 そこで,本研究では小学生を対象として,骨密度の成長の実態を把握するとともに,どのような因子がその成長に関係しているのか明らかにすることを目的とする。