先進諸国にあっては,戦後の復興と経済の発展等は,比較的安定した社会秩序の下で,人々がスポーツを楽しみ得る条件である自由時間の増加と生活水準の向上を促した。それと同時に,スポーツが生活を充実させる上で重要な意味をもつことが認められるようになり,社会におけるスポーツの振興は政治的課題の1つとして位置づけられるようになったのである。その中でもよく知られているものに西ドイツのゴールデン・プランとイギリスのスポーツ・カウンシルが挙げられる。これらについてはこれまでにも度々論評されてはいるが,そのほとんどはスポーツ振興施策の例としてあるいは実態報告として紹介され,論じられたものである。江刺や唐木等はそれらをスポーツ政策として捉え,研究を行なっているが,前者の研究はスポーツ・カウンシルを中心としたイギリスのスポーツ政策の成立過程や評価あるいは問題点の提示であり,後者のそれはゴールデン・プランを含む西ドイツのスポーツ政策にみられる公的援助の意義及びそれにみられる問題点に焦点が当てられている。従って,そこでは政策としてのスポーツ・カウンシルやゴールデン・プランの動的側面,すなわち政策の実行及びその影響の側面についてはあまり触れられてはいない。
本稿では,スポーツ・カウンシル並びにゴールデン・プランをそれぞれ現代社会におけるスポーツ政策の一環として把握するとともに,その動的側面の考察を試みるものである。しかし,資料等の関係上,スポーツ・カウンシルについては1980年代初頭までを,またゴールデン・プランについては1975年までの時期を中心に論じていくことを断っておきたい。