島根大学教育学部紀要. 教育科学

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島根大学教育学部紀要. 教育科学 33
1999-12-01 発行

異化の詩教育学 : 実践固体史研究

A Study on Poetry : Teaching in Alienation Effect
足立 悦男
ファイル
内容記述(抄録等)
本稿では、「異化の詩教育学」(「国文学攷」一六一号 一九九九年三月)で発表した、私の詩教育学の構想を、私自身の実験授業を分析することで明らかにしていく。
 本稿では、ポスト鑑賞論の立場を明確にするために、従来の鑑賞という用語に代えて、受容という用語を使用する。私は、詩の受容指導を、「詩を読む活動によって、異化の世界を作りだすこと」と定義してきた。この詩教育論は、詩の授業を、異化の世界を作りだす「プロセ」(クリステヴァ)と考えている点に特徴がある。
 私は、かつて、詩の受容指導を、詩を教える授業、詩で教える授業、詩が教える授業と、三つのタイプに分類したことがある。そして、これまでの私の研究は、「詩を教える授業」から、「詩で教える授業」へと、詩教育の構造を組み替えていく研究であった。
 本稿では、その研究をふまえて、異化の詩教育学による受容指導のパターンとして、以下のような授業プランを提示する。
 ・詩と出会う前に−題材を読む
 ・詩と出会いながら−展開を読む
 ・詩と出会った後で−方法を読む
 このプログラムは、詩の世界を受容する「プロセ」に注目して、詩の授業を三つのタイプに分類している。そして、タイプによって、読みの対象(教科内容)を区別している点に特徴がある。詩の授業類型としての新しい提案である。
 本稿では、私の実験授業(小学校・中学校・高等学校・大学)を対象化して、「異化の現象を作りだす受容指導の授業モデル」という観点から考察する。