理科教育では古くからモデル(model)が盛んに使用されてきた。例えば,ポンプの模型,人体模型等がこれである。これらは現実に認識し得る道具や物体の原理や構造を,モデルをとおして説明し,理解し易くしたものといえる。また,分子,原子のモデル,太陽系の運行模型等は,直接肉眼で目撃し難い抽象的な現象を具体化し,説明や理解の手段としている。のみならず,自然科学の研究の手段として,未知の分野の究明にモデルを使用し,新しい自然事象の解明が次々となされている。
教育の現代化に沿って計画された PSSC で取扱われている実験内容は,自然の諸現象を理解せんがためのモデル的実験が多く取扱われている。また,CHEMS や AAAS あるいは Nuffield 理科等においても,複雑な抽象的な諸現象を,生徒に理解できるような具体的モデルに置換えて,従来は高度な知識と考えられていた内容を巧に理解させようとしている姿がうかがわれる。
本稿では,これらのモデルを使用することの意義を明らかにし,理科教育にモデルを導入する場合の方法とその限界,活用の方法等を具体的例をとおして述べる。