イギリスと日本の地理教育を正確に比較することは,いろいろと困難がともなう。授業形態・テキスト及びその内容,教科の位置づけなどが,それぞれに異なっているからである。しかしながら,間違いなくいえることは,日本と比較して市販されている教材の豊富なことであろう。
決まった教科書などなく,指導する教員が適当と思う教材を選択して使用している。しかしながら,その大半がG・C・EやC・S・Eの受験を意図した内容であることは,多くのテキストの序文などから推察することができる。これらの資料を参照すれぱ,イギリスではどのような観点から地理教育がなされているか理解できよう。
わが国と違う点は,「地理」が「社会科」としての位置づけが無く,「地理学」として独立して存在しており,特に,自然環境(地形・地質・気象・気侯など)と人間生活(都市・農村・土地利用)との関係が実に詳細かつ実証的に述べられている。
本稿は,特に地形図の読図を中心に,筆者両人のブリテン島現地視察調査の経験を活かして,いくつかの資料を具体的に紹介しながら,イギリスの地理教育の一端を考えてみたい。