あらゆる行動はそれがなされる場面の物理的心理的条件によつて左右されるものであるが、特にある状況に対する行動の適応を問題とする場合には心理的条件が一層重視され、場面の知的、情緒的あるいは杜会的要因が注目されてくる。
　次に示す調査は突然生じた危機的場面に於て、とつさの間になされた行動に関するものであるが、先に述ぺたことがこのような瞬間的な反応行動に於ても該当することを示す興味ある事例としてここに取上げて見よう。
　この調査ば昭和二十三年夏、福井地方に発生した地震の際に取材したものである。但しこれは当時学生であつた私が数名の学生有志からなる救護斑に加わつて現地に赴いた際に奉仕のかたわら行つた調査である。この種の資料として決して充分なものとは云えない、しかしこのような資料はそう自由には得られない珍らしい性質のものであつて捨て去るには借しく思われるので、あえてここで報告して参考に供したいと思う。