前回の報告で,結核療養所入所患者に見られる特異な生活心理(生活感情と生活態度)が療養所生活という特異な生活様式を反映するものであることを示そうとした(1)。その際の質問紙調査の結果には,入所患者のもつ不安は直接病状に対するもののほか,家族,金銭などの生活的なものが多く見られた。また,その不満についても疾病の直接的な自由の束縛から生ずるものの他に,所内生活の規則や,医師や他の患者との人間関係からくる不満の多いことが見出された。とりわけ,入所患者の生活感情と生活態度に逃避的な傾向がいちぢるしく見られたが,これもまた直接病状に対する不安のみから生じたものではなく,入所患者の生活的条件からきたものであると推定された。この傾向は,とくに療養所のいわゆる患者問題――医師の指導監督に反抗的となり,恢復しても退院したがらない傾向――に密接につながるものと考えられる。
これらについて,前回の報告では資料の平板的な集計結果にもとづく推定に終り,序論的な段階に止まつていたので,今回の報告ではこれについて前回の資料を再検討し,それに若干の新資料を追加して一層精密な検証をこころみた。