繭は農産物中最も商品化率の高いものゝ一つである。このことは景気変動に対し強い影響受ける結果となるのであるが,元来生糸は高級繊維であるから,景気の変動が著しいにもかゝわらず,桑園は永年作物である関係上,それに即応して面積の増減を行うことは容易でない。すなわちこれは生産の硬直性の問題であつて,このような事象は繭の労働生産性の低廉さと共に,現在蚕糸業における最大の癌となっている。
そこで筆者は景気変動に対する繭の生産量の観点から,その適応能カを過去のデーターを利用して詳細に分析し,最近の課題となつている桑樹作付制限に対する或種の示唆を提供したい。