島根大学生物資源科学部研究報告

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島根大学生物資源科学部研究報告 2
1997-12-20 発行

島根大学三瓶演習林におけるスギ人工林のリターフォール量の長期年変動

A longterm observation of litterfall of Japanese Red Cedar in Sanbe Experimental Forest of Shimane University
金子 信博
片桐 成夫
山下 博
北岡 直樹
冨永 明良
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内容記述(抄録等)
We observed the amount of litterfall in Japanese red ceda (Cryptomeria japonica) plantation in western Japan for totally seven years.The effect of pruning and thinning on the amount of litterfall was also observed. Annual litterfall was 2.9 to 6.6 ton ha^<-1> yr^<-1> and, 60 to 70% of that was leaf litter. The studied stand of twenty two year-old had 29.3 ton ha^<-1> of living foliage and 29.3 ton ha^<-1> of dead foliage attached on the trunk, and it was 10-fold and 2-fold of annual litterfall, respectively. After pruning, irrespective to the stand density, the amount of litterfall increased steadily, and after three years the stand shed nearly 70% litterfall of that in the onginal forest.

 間伐と枝打ちは現代のスギおよびヒノキ人工林における重要な管理技術である.間伐は集約的林業においては材質の向上にかかせないものであり,樹木の成長や林分の構造を集団レベルでコントロールしている(只木,1969)。枝打ちは無節材生産のために行われ,同時に単木レベルで成長をコントロールすることにより林分構造にも影響を与える(藤森,1984)現在,人工林の管理においてこれらの施業がその後の林分の成長にどのような影響を及ぼすのか,のみならず環境にどのようなインパクトを与えるのかについて明らかにすることが,森林を管理する立場にもとめられている.そのなかで,リターフォール量の長期変動に関する研究は少ない(斎藤,1981)。樹木の葉は一次生産の担い手であり,リターフォール量は森林の生産力の測定にとって重要な項目である.さらに林地で分解されることによってリターに含まれる養分が森林植生に再利用されるので,物資循環速度の推定にもかかせない.
 スギの針葉は枝に着生しているので,正確な葉量を測定するのが困難である.Katsuno&Hozum1(1987.1988)は,単独の針葉の重量を測定し,針葉が付着している枝の直径との関係から葉重や葉面積を推定した.スギの針葉は枯死後も枝から離れず,リターフォールは長さ30cmから1m前後の枝の単位で落下してくることが多い.したがって,リターフォール中に占める葉の割合を知ることも生葉と同様に難しい.正確にはこれらは枝葉リター(fo1iage1itter)と呼ぷ必要があろう.これまでに,スギの葉リターの測定のために,便宜的に葉の着いている枝の直径で分ける方法が取られてきている。たとえは勝野ら(1984),Miyaura&Hozumi(1989)は,枝の太さ5mm以下の枝葉を葉リターとみなした。枝の太さは樹冠内の位置により異なる可能性がある.すなわち先端部の陽樹冠では樹冠下部の陰樹冠よりも太い枝が形成されるので,枝の太さという基準では葉リターの量の把握が困難である。本研究では枝の先端から2成長期分の部分を枝葉リターのうちの「葉リター」とみなし枝葉1と呼ぷこととする.それ以降の部分は葉がついていても「枝リター」とみなし枝葉2と表現する。また,採集時に枝から脱落した針葉の葉片,あるいは枯死後長い間樹冠にとどまって分解作用を受けている葉を分解葉
として特に区別して測定をした。
 スギの落葉はこのように枯死後も樹冠でとどまり,その後落下すると考えられるので,正確なリターフォール量の推定には長期にわたる観測が必要である.枝打ちは,樹冠の枯死した枝葉を完全に除去するし,間伐により樹冠の受ける光の量が変化するので,枝葉が枯死する速度が変化するかもしれない。本研究では,林分の成長とリターフォールの動態を長期継続調査し,間伐と枝打ちが森林のリターフォール量にどのような影響を与えるかを明らかにすることを目的とした.なお,1982年度の測定値については金子・山下(1987)に,1988年度の測定値については片桐ら(1990)に報告した.