島根大学農学部研究報告

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島根大学農学部研究報告 24
1990-12-21 発行

土地改良事業の社会経済効果 : 受益農家アンケート結果の解析

Social and Economic Effects of Land Improvement Project : The Results of a Questionnaire on Farmers' Evaluation
大森 賢一
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内容記述(抄録等)
 近年の日本農業を取り巻く与件変動は,土地改良事業の性格を変質させつつある.1983年4月12日に閣議決定された『第3次土地改良長期計画』は,土地改良事業の実施目標として,「今後の農業発展の方向に即応して農業基盤の整備及ぴ開発を図り,もって農業構造の改善,農業生産性の向上,農業生産の再編成及ぴ食糧自給力の維持強化に資すること」を挙げ,更に「田については,田畑輪換が可能な汎用田としての条件整備を進めることを重視し,圃場整備を中心に,農業用道路の整備,農業用用排水施設の整備及び暗渠排水,客土その他の田地の改良のために必要な事業を,農村地域の環境の改善に配意しつつ実施するものとする」とうたっている.
 このように近年の土地改良事業は,「汎用田」化をはじめとして多面的な効果が要求されていることが理解される.しかしながら土地改良事業自体は,上記の目標にとって必要条件ではあっても十分条件ではない.整備された圃場上で営農する農家の意向と合致して初めて,目標は達成されるのである.
 本稿の課題は,第1に上記の土地改良事業の多面的効果を受益農家の眼を通して評価すること,第2にそれらの評価を規定している事前の経済的諸要因を明らかにすることにある.特に後者の分析を通して,期待される「効果」の集落間差異を検出し,地域特性に立脚した土地改良事業の在り方を考察する一助とすることを目的としている.