本稿は、アメリカ刑法における共犯責任原理を検討する第三論文として、C・コウトー「共犯責任に要求される主観的要件−覚書−」を紹介するものである。コウトー論文は、共犯責任の起源およびその理論的根拠を概観したうえで、商品が犯罪に利用されることを知っている販売者の刑事責任や無謀・過失犯に対する共犯の成否の問題を素材に、模範刑法典やルイジアナ州をはじめとする各州の判例を通じて、共犯責任に必要な主観的要件を分析するものである。この論文で示された提案はなお理論的検討の積み重ねが必要であるように思われるが、判例の事案が比較的多く紹介されており、従来議論されてきた問題の具体化と実際の裁判所による処理を垣間見ることができ有益である。
次回からは、一九八○年代の発表された主要論文を紹介していくこととする。実際、最近の共犯論の論文は八○年代の論稿における学問的関心を反映する内容となっているからである。当面、Dressler 論文、Kadish 論文および Mueller 論文を順次取り上げる予定である。