Memoirs of the Faculty of Law and Literature and the Graduate School of Law, Shimane University

島根大学法文学部
ISSN:0583-0362
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Memoirs of the Faculty of Law and Literature and the Graduate School of Law, Shimane University 23 2
1980-02-01 発行

フランス民法と比較法

Le droit civil francais et le droit compare
Tamura, Akio
File
a001002302h004.pdf 1.67 MB ( 限定公開 )
Description
 フランス比較立法協会(Societe de legislation comparee)は1969年にその100周年を記念する論文集(Un siecle de droit compare en France,Livre du centenaire de la Societe de legislation comparee,1969)を特集した。その中で、「民法への比較法の寄与」というテーマを民法学者 Gabriel Marty がフランス民法の立法、法政策、判例、学説に及ぼした比較法の影響という視角から述べている。彼の結論を簡単に言えば、第1に、比較法的分析はその国(彼にとってはフランス)の法的状況−解決を必要とされている諸問題−から離れて行われることはできない。フランスの経験は(勿論フランスの特殊性もあるが)、あくまでも国内法(の諸状況)に従属した比較法研究こそが役に立つし必要であるという、比較法学のもつひとつの性格を実証しているということである。第2に、このことは決して比較法的研究の価値を低下させることではなく、それによってこそ法的諸問題の解決や法的状況の変革・進歩が客観性と普通性をもち、科学的に行われることが可能となるという比較法の積極的な役割りを確認することでもあるという主張である。
 比較法学の目的や価値について、例えばサレイユ・ランベール・レヴイ・ウルマンのような全世界的、全人類的な「立法共通法」を指向するものと、ダヴイッドのような法の全ゆる分野に適用されるべき比較方法を問題にする「機能主義」的方向とを分けるとすれば、G.Marty は後者の側に位置するといえよう。以下、彼の論述に従って、まず歴史的に概観し、次いで法政策及び狭義の立法技術への影響を、最後に判例・学説への影響をみてゆくことにする。