Studies in language and culture : memoirs of the Faculty of Law and Literature

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Studies in language and culture : memoirs of the Faculty of Law and Literature 9
2000-07-31 発行

楊萬里詩の口語表現

A Study of Colloquial Expressions in Yang Wan-Ii's Poems
Shiomi, Kunihiko
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楊萬里(一一二七~一二〇六)は、宋代でも南宋と呼ばれる時代を生きた人物である。同時代を生きた人物として二歳年上に陸游、一歳年上に笵成大がいる。
楊萬里の詩は四千二百七十首と、宋代の現存する詩数中、陸游につぐ多さである。
彼の詩の特色は、従来からもよく言われているが、詩中における多くの口語使用である。同時代の陸游も詩中に口語を使用するが、陸游が基本的には唐代の口語を多く使用するのに対し、楊萬里は宋代の口語をより多く使用すると言えよう。その事は既に胡雲翼氏が『宋詩研究』の中で「第十六章、白話詩人楊萬里」というテーマで彼のことを論じている一事からでも判明するであろう。
楊萬里が白居易集を読み、その影響を強く受げたことは、彼自身、詩中で「偶然一讀香山集、不但無愁病亦無」(巻四二『退休集』「端午病中止酒」)と表白している所であるが、その詩人楊萬里の評価は、彼の友人でもあった陸游が「我不如誠齋、此評天下同」(『剣南詩稿』巻五十三「謝王子林判院恵詩編」)と述べているように、陸游自身の貶辞だと差し引いて考えても、南宋という時代を生きた人々から、楊萬里がかなり高い評価を受けていたことの傍証ともなり得よう。
しかしながら、楊萬里の詩が「白話」に富んだものであり、陸游でさえ一目を置かざるを得なかったことの内容については、従来、詳しく論じられてこなかったと言ってよい。
この小論では、彼の詩の中に使用された口語語彙に注目し、楊萬里の詩の内容が、主に陸游と対比しつつ、いかに口語表現に富んだものであるのかを見てみようと思う。その際、
A、唐代から使用されてきた口語語彙、
B、宋代に入って現われた口語語彙、
の二方面から分析を進めたい。同じ口語とは言っても、前代(唐代)からの口語表現を多く用いる面と、彼が生きた宋代の口語を使用する面の両方を見ることで、彼の詩中での口語表現のあり様を十全にみてみたいと思うからに他ならない。
尚、定本としたのは、『全宋詩』(全七十二冊、北京大学出版社刊)の内、第四十二冊目が楊萬里全四十三巻本である所から、この本を使用した。
NCID
AA11147571