Studies in language and culture : memoirs of the Faculty of Law and Literature

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Studies in language and culture : memoirs of the Faculty of Law and Literature 4
1997-12-25 発行

Love means never having to say“what do you mean ?” : 英語におけるメタ言語的活動の諸相(1)

Love means never having to say“what do you mean?” : Aspects of metalingual activity in English(1)
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Description
言語の果たす様々な機能について考察した論考の中で、R.Jakobson(1960)による6つの分類、すなわち、指示的機能(referential function)、情動的機能(emotive function)、指令的機能(conative function)、交際言語的機能(phaticfunction)、メタ言語的機能(metalingual function)、詩的機能(poetic function)の分類は特に有名である。本稿では、このような機能の中で、メタ言語的機能(metalingual function)を取り上げ、英語の中でその機能がどのように実現されているのかを観察、記述し、考察していきたい。
さまざまな伝達活動の中で、自らの発言あるいは他者の発言に対して、その用いた(あるいはこれから用いようとする)言語表現そのものについて言及したり、それに焦点を当てながら、言語表現そのものの適切性を問題とすることがあり、このような場合には、言語はメタ言語的機能を果たしている。さらに、こうしたメタ言語的機能の射程を広げると、言語表現そのものについての言及ではないが、’What do you mean’に代表されるように、相手の言語表現に反応して、相手の発話意図を問ったり、また、自らの発話行為について様々な制限を加えたり、態度表明を添えて発言するような場合についても、メタ言語的に言語を用いていると言える。こうしたメタ言語的活動は、言語機能全体からその占める部分を考えると、やはり周辺的なものと言わざる得ないが、依然として言語活動の重要な一部分を担っている。メタ言語的活動は日常の会話において頻繁に起こり、話し手と聞き手の相互作用の中で、「発話の調整」に大きく寄与している。実際、会話の定型表現とされるものの中には、こうした言語のメタ言語的使用に関連した表現が数多く見いだされる。
本稿では、特にこうしたメタ言語的活動に用いられる英語表現を中心にして、その議論を進めていきたい。議論の中心は、そのようなメタ言語的活動を合図する談話標識(discourse markers)や定型表現、さらにそれに関わる構文そのものに置き、会話分析的な伝達のメカニズムについては、それぞれの表現の文脈的効果の中で扱っていきたい。目指すところは、こうしたメタ言語的な観点から英語表現を考察し、こく普通の用法として見過こされてしまいがちな語法や、あるいは一見破格的に見えたり、定型表現としてすまされてしまっているような語法について、その本来的機能を浮き彫りにしていくことである。
なお、本稿で論じるメタ言語的活動は大きく2つに分類でき、「言語表現そのものについての言及」を単に、「メタ言語的使用」(metalingual use)と呼び、「発話行為についての言及」を「メタ伝達的使用」(metacommunicative use)と呼んで両者を区別し、本稿では、主として前者を扱っていく。また、以下、アメリカ英語を中心に、英米の作品からの実例を基に現代英語の姿を眺めていくが、そうした作品からの引用については、文脈をできるだけ分かりやいものにするために、部分的には言語表現そのものを扱うため訳出が困難な箇所もあるものの、日本語訳を付すこととする。