ここに紹介するのは、近世、松江藩政の腐敗を発いた怪文書である。島根県某家の旧蔵から、はなはだしく虫損を蒙った状態で発見された。題して『夢中地獄』という。写本、全一冊。袋綴。縦二六・三センチ、横一八・二センチ。料紙は楮紙を用い、全一三丁、内、遊紙、末に四丁。表紙も本文料紙と同質の紙を用い、紙縒で綴じる。表紙中央に「夢中地獄」と直題し、見返しに「享保八年雲州松江諸士以下三斗表之落書」と内題する。各半丁一四行と、行数は一定しているが、字の大小定まらず、かつ、はなはだ乱筆である。見返し、内題右横に、「此主佐丸」とあるが、この人物については知り得ない。なお、本書には、享保から天明にかけての当家の主(天明四年没、六十八歳)の印、および「某家之印」の二種の蔵書印を押す。