Memoirs of the Faculty of Law and Literature

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Memoirs of the Faculty of Law and Literature 12 2
1989-12-25 発行

会話の構造とストラテジー(1) : 隣接対と諸連続

Conversational Structure and Strategies
Makikawa, Masami
File
a003001202h001.pdf 1.58 MB ( 限定公開 )
Description
我々が日常殆ど無意識に行っている会話は,いろいろなゲームの展開に似て、序盤(opening game)から中盤(middle game)を辿り終盤(end game)に至るプロセスを経ている。即ち大なり小なり挨拶(greeting)から始めて話題を展開し,会話の参加者が二人であろうとそれ以上であろうと,混乱なく会話のやりとりを行い,どこかの時点で会話を終了する。
一見して何の規則性もないとしか思えないこの会話のやりとり(conversational interaction)は,実は巧みに構造化された言語活動であり社会的相互行為であり種々の原則やストラテジーに基づいている。
Grice(1967)の協調の原理(Cooperative Principle)は会話のやり取りにおいて話者,聞き手が暗黙のうちに心得ている会話の原則をよく示していると思われるし,Lakoff(1973)の丁寧さの規則(Rules of politeness)は,会話において人間関係をうまく保つ為に話者と聞き手がそれぞれの立場を考える場合に採る当然の方策(ストラテジー)の一面を表していると考えられる。
会語の参加者が夫々の目標(goal)達成の為にどのような方法で会話を進めているかに就いては,Shegloff(1973),Schegloff & Sacks(1974),Jefferson(1972),Schenkein(ed.)(1978)、Coulthard(1977)などが,実際の会話を収録・分析して研究し,会話の順序取り(turn-taking),会話の始め方、会話の終わりの方の三つの大きい問題を取上げている。
これらは,いわゆるethnomethodology(言語生活論)の分野に属するもので,われわれの日常の言語生活の記述と分析が課題である。子供が社会的コンテクストにおいての相互行為に初めて出会うのは話し言葉(会話)のやりとりであり、社会へ参入していく過程で「話し言葉」による意思伝達あるいはコミュニケーションの枠組みを身に付けていくことが,子供の社会化の大きな基盤となることを考えると,目常の普通の会話の分析・研究を社会的相互行為という面からなされるべき根拠と正当性は十分にあろう。
本稿では,会話の最小基本単位である隣接対(adjacency pair)が会話の構造の中でどのような機能を果たしているかということと併せて,上記の三つの問題を会話を進める上のストラテジーとの関連で考察をしたい。
NCID
AN00108081