本研究の目的は、「民生委員推薦準備会」が、民生委員を推薦(選出)するにあたり、どのような機能・役割を果たしているのか、を明らかにすることである。事例として、島根県松江市の民生委員推薦準備会の活動を取り上げる。
小論の間題関心について述べておく。現在、民生委員は「担い手不足」と指摘される。地域社会がボランティアの担い手を産み出すことが難しくなってきているのである。従来の研究では、「誰が」新たな民生委員を探しているか、に関心があった。具体的には、自治会長であったり、担当行政職員であったりという「個人」が、民生委員を発掘していると指摘されてきた。しかし、今日、「個人」の力のみで民生委員を発掘するには限界があるように思われる。そこで、本研究では民生委員推薦準備会という「組織」に着目して、民生委員の発掘プロセスを明らかにしようとする。民生委員推薦準備会は、非法定の組織でもあり、その実態はあまり知られていない。
結論部分では、民生委員推薦準備会の機能・役割を3点述べた。(1) 小地域が独自の推薦システムを持つこと、(2) 行政事務の実質的担い手となっていること、(3) 地域社会が民生委員を承認・支援する機能を持つこと、である。住民自治と行政事務という2つに着日しつつ、述べた。