Journal of social systems

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Journal of social systems 2
1998-03-10 発行

概念生成文の作成

Concept generation sentences
Matsukawa, Junko
File
a010002h006.pdf 637 KB ( 限定公開 )
Description
先行する課題が後行の課題に無意図的に影響を与える潜在記憶については,大きく分けると転移適切性処理仮説と知覚表象システム仮説がある。両者の主張は処理とシステムの違いはあるが,共に先行の学習課題での処理や用いられるシステムが,後行のテスト課題での処理とシステムが共通であるのか異なるのかといった議論を含んでいる。処理説ではデータ駆動型処理と概念駆動型処理の比較,システム説では知覚表象ソステムと概念表象システムの比較が問題になる。その典型的なパラダイムとそれによって得られた実験結果が図1に示されている(B1axton,1989)先行学習課題として単語のリスト読みや概念生成課題を行い,後行課題として単語完成課題や一般知識課題やカテゴリー分類課題をするというものである。単語完成課題とは,“あ○○どう”など,単語の文字の一部がぬけたものから,単語を完成するというものである。単語完成課題に用いられる日本語材料については,既に太田・小松・原田・寺澤(1991),森・太田(1991)などの報告がある。一方,概念生成課題とは,適当な文の一部が抜け落ちている所を意味的に合致するように単語を補填するものが多い。本資料は,この概念生成文の作成と生成概念の結果についての報告である。
概念の生成は通常単語によって報告されるものが多いが,事物などの概念については線画などによっても可能である。言語過程と非言語過程(ここでは視覚的過程)の相互作用や両者の比較の研究からは,単語と線画に対応する概念生成文の作成が望まれる。そこで,本研究では既に多くの研究者によって用いられているSnodgrass&Vanderwart(1980)の線画材料から,生成すべき概念を抽出し,対応する概念生成文を作成した。線画と対応する概念名は松川(1983)から得た。概念生成文は,線画との対応を考慮し,熟知度の高いものから作成された.例えば「ツクエ」からはさまざまな形態の机を想像できるが,線画では両袖机が表してあり,文と線画との不一致が生じないように配慮した。そのため概念文は表現には制限が生じた。そのような問題はあるが,一方で線画・単語・概念生成文との対応ができており,応用範囲が広いと考えられる。以下に生成された概念についての結果を報告する。