運動を持続させる能力,すなわち持久力は体力のおもな要素の一つである。持久力は運動に参加する筋群の多少によって全身持久力と筋持久力に大別される。この全身持久的な体力を評価する方法として,V^^・O_2max.(最大酸素摂取量)の測定に代表されるmaximal(最大)テストとsubmaximal(最大下)テストとがある。全身持久的な作業では有酸素的作業能が主体となるため,maximalテストによるV^^・O_2max.の測定は,全身持久性との相関が高い点ではすぐれているけれども,被検者はall-out(疲労困憊)に至るまで作業を遂行せねばならない。このため身体的,精神的にかなりの苦痛を伴う。子供,老人に対してのmaximalテストの実施は危険でさえある。これに対してsubmaximalテストは低いレベルでの作業が要求されるため,被検者に苦痛を与えることが少く,従って対象範囲が広がる点ですぐれている。submaximalテストの一つとして<PWC>_<170>テストがある。このテストは一定範囲内での心拍数と負荷量とが直線関数であらわされることから,心拍数と負荷量との関係をplotし,回帰直線を求め,定常状態での心拍数が毎分170回のときの負荷量を求めようとするものである。<PWC>_<170>はV^^・O_2max.と高い相関があることがHolmgren等によって報告されている。ところで持久走の記録を左右する因子として,呼吸機能の持久性・循環機能の持久性・脚筋の持久性・精神機能の持久性が考えられるが,<PWC>_<170>テストは全身持久性を循環機能の良否から判定しようとするものである。ところが,<PWC>_<170>による循環機能の側面から行った全身持久性の評価が,実際の運動に対してどの程度有効なのか疑問が残る。そこで本研究ではタ運動部所属男子大学生を対象とし,すべての機能の総合された結果としてあらわれる持久走の記録と<PWC>_<170>との相関の有意性を調べ,<PWC>_<170>テストの全身持久性測定法としての妥当性を検討し,さらに、運動クラブ間の比較と持久走の種目間の比較から,持久走と<PWC>_<170>の関係の特性を明らかにすることを目的とした。