Memoirs of the Faculty of Education. Literature and Social science

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Memoirs of the Faculty of Education. Literature and Social science 9
1975-12-25 発行

自然数の構成に関する一考察

A Study of the Construction of Natural Numbers
Matsui, Tamotsu
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 いわゆる自然数論は Dedekind あたりに端を発すると考えても良かろう。彼は数概念を《空間・時間の表象、または直観に全く依存せず,むしろ純粋な思考法則から直接に流出するもの》と考えた。この論理主義の元祖に対する反動が,Poincare や Brouwer など色々な立場での直観主義の数学を生み出す史的要因ともなったのであろう。
 ところで。上記の元祖に Frege, Peano らが続き,やがては Russell, Whitehead を経て,Quine, Church(…と,論理学・数学上での V.I.P. 諸氏の名前を並べ尽すことは,失礼ながら省略します。)となるわけで,彼らにおいて実にさまざまな形での自然数の構成法が展開されることになる。
 さて,このような自然数論,もしくは自然数の構成と言う論理−数学上の問題と,個体における自然数概念の発生と言う心理学上の問題とについて,Piaget や Grize らのジュネーヴ学派が,両者の関連をどのように受容し,何を主張しているのか。この考察が本小論の目的である。つまり,自然数に関し,その心理学的な発生の構成様式と形式論的な構成手続きとの比較が問題とされることになろう。ただし,今回の考察は数学の認識論研究のための覚え書きに過ぎない。
 なお,以下「心理学(的)」とは,なるべく上記学派の文脈において使用し,「数」は自然数の意味である。また,「P氏」や「G氏」とあるのは,Piaget や Grize の略記とご了承願いたい。