Memoirs of the Faculty of Education. Literature and Social science

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Memoirs of the Faculty of Education. Literature and Social science 7
1973-12-25 発行

教授学研究の現状と課題(I)

Die gegenwartige Zustande und Aufgaben der Didaktikforschung(I)
Yamashita, Masatoshi
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 現在,次のような事態が研究者,実践者によって問題とされているようである。授業における子どもの学習過程を,もっぱら客観的にすでに確定されている科学的成果の尺度で測定することによって,子どもの主体的な認識状況を破壊していること,子どもたちを,知識注入のための単なる「容器」と見なし,子どもたちから目的意識的=主体的行為としての学習を奪っていること,また,授業を「新幹線並」に進行させることで,授業本来の思義を失なわせ,多くの子どもたちに真に学習を保障していないこと,最近の授業分析や教材構造化や学習過程の段階化などの主張によって,子どもたちに知識を効率的に理解させることが主要な仕事になって,子ども自身の認識のし方を自主的なものにし,生産的な思考へと主体的に変革,発展させるという点が見おとされていることなどである。それらのことを克服して,子どもたちみんなに,授業内容がわかり,彼らがそれについていけること,授業過程を,知識量の注入・伝達としてではなく,あくまで課題発見,解決的な過程として構成し,そうすることで生産的な思考力や学習のし方,研究のし方そのものを教授しようとすることが,広く現代教授学の一つの重要な課題であると思われる。
 本論文は,上述のことを研究出発の前提としながら内外の諸研究・諸実践のうち,主として一般教授学レベルでの諸研究,一般教授学から見た諸実践を紹介し,そのことを通して,今日の授業のもつ諸問題や課題を理論的に,実践的に考えてゆこうとするものである。今回は,とくに,L.クリンクべルクの『一般教授学研究入門』(Einfuhrung in die Allgemeine Didaktik,1972.)を媒介にして論を進めることにする。