現観荘厳論釈の梵文写本について,その第一章から第九章までを五回にわかって発表してきたが,本稿で紹介する序章に相当する部分でもって一応完結することになる。
当該個所は分量的には僅か一葉半の短いものであるが,内容的には欠落,破損,印刷不鮮明などの個所が多く,解読を非常に困難にしている。
そこで本稿では,正確な解読に資するために,従前のごとくAloka の対応個所と比較対照するとともに,Aloka に対応個所がない場合には,本釈のチベット訳文を挿入補填し,あわせて Tripathi教授の還梵テキストから該当個所を引用し脚註に付することにした。