島根大学論集. 教育科学

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島根大学論集. 教育科学 7
1957-03-30 発行

農村中学校における職業指導

Vocational Guidance in Rural Secondary Schools
Katayama, Mitsuharu
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農村が潜在失業者のプールであることは、日本の産業構造が革新されないかぎり、景気変動の波に沿うてくり返される暗い影である。この暗い影をもつ社会に、毎年、全国の中学校卒業者一七〇万のうち約半数が就職者として送られ、さらにこのうち農村に残つて農業に従事する者は、だんだん減つてきてはいるが、それでも二〇万人を越している。(註−) しかるに日本の農業が、毎年この新しい労働力を抱えこんでゆけないことは、今日の深刻な農村のニ三男問題が明らかに物語っている。
 農村申学狡の卒業生が、自家にとつては待望されたてまとなり、農繁期にはかけがえのない労働力となるために、長男の場合はともかく、二三男までもが同じように家に止まり、職業生活に対する計画も持たないで、生活経騒の空白時代を過ごすという傾向は、全国的にみられるところである。農村の中学校はその教育計画に、この点に関してどんな配慮を示しているのであろうか。もちろん教科としての職業・家庭科の学習内容に、職業生活の技術、知識及び態度を啓発するよう仕組まれているが、教科と密接に関蓮して行われる筈の職業指導にどれほどの期待を寄せることができるであろうか。さらに問題は、長男として農家の後継者となる青少年に、自家の農業経営や地域の村づくりに、腰をすえてかかる素地を、どのように培われているか、という点にもあるであろう。
 この研究は、以上のような意図で、学生と共同調査のテスト・ケースとして、農村中学校卒業生の進路の実態をとらえ、地域社会の性格をながめ、学校教育の背負う課題を見出そうとしたものである。從つてこの調査の立場は、次の諸点に求められる。 (1)青少年の進路が、その環境や地域社会との相互作用において規定される事実を考察する。
 (2)農村中学校におげる職業指導を事例として調査し、その問題点を明らかにする。
 (3)職業指導は、学校教育全般を背景として行われるものであるから、調査対象校の経営内容を分析せねばならないが、種  々の制約から、それは研究の次の段階にまつこととした。
NCID
AN00108117