島根大学論集. 教育科学

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島根大学論集. 教育科学 15
1965-12-25 発行

交通事故の推移に関する研究 : 事故要因の社会病理学的アプローチ

A Study of Transition of Traffic Accident : It's Social Pathological Approaqh
Nishiyama, Satoru
Fukui, Kazuaki
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最近,多発の傾向をたどっている交通事故の原因には,さまさまなものが考えられる。また,それらの対策についても,多くの立場から各種の試みがなされている。このような交通事故頻発の傾向は,いわぱ社会病理現象というべきものである。したがってまず,この病理的現象の原因を分析把握し,ついでこれらの諸要因が綜合的観点から検討されることにより,問題解決への方途が見出されなければならないであろう。
 近年,急激に増加してきた交通事故は,ようやく世論の喚起を捉し,人々にその対策の必要を痛感させるにいたった。交通安全国民会議をはじめ,各種の対策協議会や交通安全都市宣言等はそのあらわれであろう。
 しかしながら,この種の交通安全運動が,従来,ややもすれぱ事故防止の抽象的論議やその原因および対策についての一断面を強調するにとどまり,散発的なかけ声や運動に終始して,十分な成果をあげるにいたらなかったといえよう。
 われわれは既に「交通事故防止のアクション・リサーヂ」の一環として,運転従事者の疲労を中心に,労働生活の実態やその条件の解析を行ない(4)(5),彼等に対する交通安全,事故防止への意識の高揚をはかってきた。しかしながら事故の原因は必らずしも運転者の疲労や彼等の生活の形態や内容のみによるものではなく,他の多くの要因も当然予想されたのである。すなわち,自動車数の増加,道路状況の変化などの客観的条件、さらには社会全般における人々の「交通安全」に対する意識・態度等をもあわせ考えなくてはならない。
 以上のような観点から,われわれは今回,交通事故の推移,自動車数の増加,主な事故原因,道路条件,さらには新聞報道にあらわれた交通安全に関する世論の動向および行政施策等について逐年的な考察をおこなうことにより,交通事故の全般的な検討をおこなうものである。