島根大学論集. 教育科学

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島根大学論集. 教育科学 10
1961-03-20 発行

教師の児童観・生徒観に関する研究 : MTAI日本版標準化の試み(1)

A Study of Teacher Attitude toward School Children and Pupils : Tentative Approach for the Standardizing Japanese Edition of Minnesota Teacher Attitude Inventory(1)
Nishiyama, Satoru
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教育の現場における対人関係の中心となるものは,いうまでもなく教師であり児童・生徒である。この両者が,学校なり教室という場においてそれぞれの役割(role)を演じているわけである。然しながらこの両者たおける人間関係は、一般社会や職場における上下関係,支配服従関係とはその意味を異にするものである。教師は彼の地位と役割を通じて児童・生徒という未熟者に対し,心身両面にわたる指導を行うことがその任務であり,義務であるし,半面また児童・生徒は学校生活を通じて得る体験,学習によつて成長発達してゆくのである。したがつて学校なり教室なりは,児童・生徒の保護・育威のために理想的な教育環境であるよう整備されることが肝要である。而して教師は,Laneも指摘する如く,(6)「1、学習意欲を開発する人であり,2、児童・生徒の弁護者,代表者3、児童・生徒の民主的リーダー,となり,また4、児童・生徒たちの友人ともなり,そして5、権威を兼ねそなえた人でなくてはならない」わけであるから,教師が他の指導的立場にある職業人とは異つた指導皮術と資質をもつことが.必要となるのである。
 さて教育は根本的に教えるものと,教えられるものとの相互関係によつて成立するものである。致師は児童・生徒との間に好ましい人間関係を育成する為には彼らが教師に対して描いている理想の教師像を築くことからもなされるであろう。よい教師とは,すぐれた教授法,児童・生徒への理解,親切,厳格で学力があることであり,また公平に親切であることである。このように教師と児童・生徒の人間関係には単なる対人的つき合い以上のものであり,教師の人間像は,ひいては学級集団の個性にまで影響を及ぼすのである。(4)
 かく論じて来るときは,我々は教師と児童・生徒の人間関係が彼らの学校・学級における活動に大きな役割をはたしていることに気づくのである。教師と児童・生徒のラボートを色々のテスト・バッテリーを用いて予測しようとしたRabinowitzらの試み(5)や,Medleyらの授業中における学習活動を把握するための因子分析的研究(3)も畢竟するにこれらの問題の重要性を認識したにほかならない。
 このようによき致育・指導を行うにあたつて人間関係のよしあしは教授者であり,指導者である教師が、児童・生徒との相互作用に大きな影響を1もたらす。この人間関係を形成するための一つの次元として,教師の対児童・生徒観の研究は,単に教師の児童・生徒に対する指導面だけでなく,彼等の「教育観」,「教職使命観」を知る上にも極めて重要な意義をもつものである。換言するならば,教師の対児童・生徒観を知ることは,彼が教師として,児童・生徒を如何なる信念・指導方針のもとに教え導いているか,を知る一つの大きな手がかりともなりうるわけである。