島根大学教育学部紀要

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島根大学教育学部紀要 47
2013-12-25 発行

指導者の支援的行動が中学・高校運動部員のバーンアウト傾向に及ぼす影響 : 自己決定理論からのアプローチ

Effects of Coaches’ Supportive Behavior on Burnout Tendency in Junior High and High School Athletes : An Approach from Self-Determination Theory
池本 雄基
杉山 佳生
ファイル
内容記述(抄録等)
 本研究の目的は、中高運動部員のバーンアウト傾向に対する指導者の支援的行動の影響について、自己決定理論の枠組みを用いて検討することであった。中学校の運動部員93名(男子34名,女子59名)と高校の運動部員95名(男子72名、女子23名)の計188名を対象に、指導者の支援的行動,心理欲求の充足、動機づけ、バーンアウトからなる質問紙調査を実施し、指導者の支援的行動が部員の心理欲求の充足と動機づけを媒介してバーンアウト傾向に影響するという本研究の因果モデルを構造方程式モデリングによって検討した。その結果、まず、支援的行動と心理欲求の充足との関連では、自律性支援行動と有能さ支援行動が自律性への欲求の充足を促すとともに、関係性支援行動は、指導者と仲間への関係性への欲求を充足させる方向で影響していた。つぎに、心理欲求の充足と動機づけとの関連では、自律性への欲求の充足は内発的動機づけ、同一視的調整、および取り入れ的調整を高めるのに対して、無動機づけを抑制することが明らかとなった。また、指導者と仲間に対する関係性欲求の充足は、統制的動機づけである外的調整と無動機づけを抑制する方向で影響していた。さらに、動機づけとバーンアウト傾向との関連では、内発的動機づけが情緒的消耗感を、取り入れ的調整が自己投入の混乱をそれぞれ抑制するのに対して、統制的な動機づけである外的調整と無動機づけはバーンアウト傾向を高める可能性が示された。13;13;
 以上のことから、指導者の自律性支援行動と有能さ支援行動によって充足された部員の自律性への欲求は、自律的な動機づけを高めることを通して、また、指導者の関係性支援行動によって充足された部員の関係性への欲求は、統制的な動機づけを抑制することを通して、それぞれバーンアウト傾向を抑制する可能性が示された。これらの結果は、自己決定理論の予測をほぼ支持するものであり、指導者はバーンアウト傾向の抑制のために部員の心理欲求の充足を促す支援的行動を積極的に行うことの重要性が示唆された。
DOI(SelfDOI)