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タイトルヨミ
キュウボウカロン ノ ホウホウ ニツイテ
ファイル
a006012h005.pdf 1.36 MB ( 限定公開 )
言語
日本語
著者
本山 貞一
内容記述(抄録等)
労働者階級の絶対的窮乏化は資本制生産の一般的法則であって、資本制生産の発展にともなって労働者階級の生活状態はますます悪化する、という見解が、現在いわゆる窮乏化論としての通説をなしている。その根拠はマルクスが資本論の第一部第七篇であきらかにした相対的過剰人口の形成におかれている。相対的過剰人口は労働賃銀にたいする抑圧手段であるとともに、資本制生産の発展によってますます増大する規模で形成される、したがって資本制生産の発展にともなって労働者の賃銀はますます低下せざるをえない。こうして労働者階級の窮乏化は、単に社会的地位の相対的悪化という線を越えて、すすむ。これが絶対的窮乏化である、と。
わたくしはしかしこの説には理論的にそしてまた方法的に納得しえない点があると思われる。それはまず第一にマルクスのいう相対的過剰人口がはたして労働者階級に継続的な窮乏化をもたらすような性格のものであるかどうか。第二に労働者階級の絶対的窮乏化を資本主義に一般的なものとすることは歴史的事実に反するのではないか。第一の点は理論的な問題で資本主義の基本的な理解の問題につながっている。相対的過剰人口を通説の如く考えることは資本蓄積論を一面的な理解に堕さしめるのではないか。資本の労働力反撥の面だけが強調され、吸収の面が正当に評価されなくなってくる。これでは相対的過剰人口の発生すら正しく解明しえないと思われる。第二の点は経験科学としての経済学にとって根本的な問題であろう。
わたくしはこの点を検討し、あわせて窮乏化論の方法を考えてみたい。
掲載誌名
島根大学論集. 人文科学
12
開始ページ
93
終了ページ
101
ISSN
04886518
発行日
1962-12-20
NCID
AN00108183
出版者
島根大学
出版者別表記
Shimane University
資料タイプ
紀要論文
部局
法文学部
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