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タイトルヨミ
リンギョウ ニオケル シホン シュギ ハッテン ノ ショモンダイ
日本語以外のタイトル
Some Problems on the Capitalization Forestry
ファイル
言語
日本語
著者
北川 泉
内容記述(抄録等)
 戦後,農地改革の評価をめぐつての農業近代化論争がかなり活溌につづげられて,旧講座派・労農派の対立が激烈を極めたことは記慮に新らしいところであるが,現在では旧・講座派と労農派はお互の相互移行のうえに,より高くみのりの多い見解をうちたてようと努力しているし,そのことを通じて数多くの成果が得られたことも事実である。
 それに比して,林業における資本主義発展の諸問題にかんする研究は,その意図するものは若干みられるけれども正面から取り扱つたものとしては,わずかに岡村明達氏の「林業資本主義化の諸間題」(林業経済誌1957年6.7.8月号)の一編があるにすぎない。それも岡村氏自身が指摘しているように,極めて総花的であるし,問題提起の段階以上のものではない。このような林業における資本主義分析の立ち遅れは,近年に至るまでみられた林業それ自体の産業としての立ち遅れからきている面が多いものと考えられる、しかしながら,近年に至つてパルプの林業への偉大な関心とそれへの浸透,および分収造林の著しい進展,それにつれて甚しく発言カを強めてきた林野所有者たち,数えあげるときりがないくらい新局面がぞくぞくと生れてきている。こうした新らしい情勢の前に林野所有自体が極めて種々な形態をとつて変質してきているという過程こそ,わが国における農民のプロレタリヤ化の一つの特徴であり,同時に林業資本主義化の特質でもある。こうした過程の中に市場的林業があらゆる形態をとつて成長をつづけてきたことは,日本林業がわが国経済の資本主義的構造のうちにまきこまれていく過程であり,こうした認識をはなれて,日本林業の正当な位置づけではないのである。
 ところで,林業における資本主義発展の諸間題を正しく分析していくためには,われわれは,まず第一に林業における資本主義的関係の形成・発展という林業発展の基本的方向を確認し,林業における特殊な地主または農民的林野所有,あるいは国家的林野所有のもとで「これこれの地区では,いつたいどのように,また,どの程度に林業が資本主義的になつているかを解明しなくてはならない」のである。第三に,こうした認識および基本的諸傾向を確認したうえで,「その発展のテンポ,形態,条件,環境を具体的に研究しなければならない」のである。
 しかしながら,林業における資本主義発展過程の形態は周知のごとくけつして一様ではない。そこに,単なる資本主義化一般に解消してはならない理由があるし,林業資本主義化の特殊性をみていかねばならない点を忘れてはならないのである。しかも林業における資本主義の発展は,その現象形態が多くの場合工業におけるとは比較にならないし,また農業に比較しても複雑で錯綜した過程をたどるのであり,それゆえにこそ林業の資本主義化に関する問題が現実には強く要請されているにもかかわらず,一致した理論が生れるまでに至つていない理由なのである。こうした段階にある現在にあつては,極めて大胆な間題提起による私見の発表も許されるであろう。私は自分自身の問題の整理の意味からも叉不充分な未熟な見解ではあるがここに私見を述べて同学諸氏の御批判を仰ぎたいと思う。
掲載誌名
島根農科大学研究報告
7
開始ページ
(A)257
終了ページ
265
ISSN
05598311
発行日
1959-03-31
NCID
AN00108241
出版者
島根農科大学
出版者別表記
The Shimane Agricultural College
資料タイプ
紀要論文
部局
生物資源科学部
備考
A,Bを含む
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