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タイトルヨミ
シキ エンソウ ニ カンスル キソテキ ケンキュウ 1 ゲンガッキ エンソウ カラ ノ アプローチ
日本語以外のタイトル
Basic Study in Conducting Orchestral Music I. A view based on the performaces of string-instruments
ファイル
言語
日本語
著者
知念 辰朗
内容記述(抄録等)
 指揮が専門化され独立した演奏分野として確立されたのは,19世紀に入ってからのことである。演奏分野において一番遅く確立したにもかかわらず,現代では最も脚光を浴びた存在である。しかし演奏という分野にいながら自ら音を出さないという大きな矛盾がある。現在,指揮者になるためには音楽に関する広範囲な知識と技術が要求される。更に指揮者にふさわしい人間的資質も問われる。このように他の演奏家に比べ多方面の才能が要求されているのだが,最大の矛盾である自ら音を出さないということからいえば,結局指揮者は大勢の奏者の力を結集し,自己の解釈と一体となって音楽を創造していく新しい形(スタイル)の演奏家といえよう。又,直接音を生み音楽を創る声楽や器楽の演奏家に対し,間接的な演奏家ともいえる。いずれにしても指揮者は,オーケストラの発展により生まれた,独特な任務を持った演奏家である。
 さて,オーケストラは現在最も盛な演奏団体の一つである。伝統のあるヨーロッパでは,小さな町にも優れたオーケストラが散在し,その地域の人達に親しまれ愛され,市民生活にとって必要な存在になっている。日本では,戦後おこった弦楽器ブームの波が一つの核となり,器楽指導法の飛躍的発展と普及の結果,優れたアマチュア奏者が各地に育ち,都会の大学を中心にたくさんのオーケストラが存在し競合している。この最大の理由は,オーケストラ音楽の持つ本質的な魅力に尽きる。この魅力にとりつかれ,若者達は熱中するのであるが,真の魅力を実感として味えるまでには,さまざまな苦労が伴うのである。しかし,若者特有の熱気と挑戦的意欲により,かなり高いレベルの演奏を披露している。音楽の世界では,名人・巨匠が求められ,そうした演奏家が活躍する場と,合唱・合奏に見られるように,アマチュアが自ら演奏し音楽を創造する場が必要である。オーケストラにも見られるこうしたアマチュア達の積極的な参加は,やや沈滞気味のクラシックの音楽界にとって,将来の活性化につながるものと期待される。
 さて,こうしたアマチュアを指揮する指揮者とプロのオーケストラの指揮者とでは,自ずから任務の内容が違ってくる。特に練習段階においては,その違いは大きい。アマチュアが合奏の基礎的技術をしっかりと身につけ,立派な奏者に成長するまでには,かなりの時間がかかる。これらの技術はどれもこれも言い尽くされ,わかりきったことばかりである。しかしアマチュアの多くは,この技術の重要さに気付いていない。指揮者は,まずこうした基礎的技術の重要さを,一人一人の奏者に合奏の場で認識させることから始めなくてはならない。この小論では,こうした合奏における基礎的な諸問題について論じ,弦楽器演奏の面からも,敷延する。
掲載誌名
島根大学教育学部紀要. 教育科学
20
開始ページ
97
終了ページ
106
ISSN
0287251X
発行日
1986-12-25
NCID
AN0010792X
出版者
島根大学教育学部
出版者別表記
The Faculty of Education Shimane University
資料タイプ
紀要論文
部局
教育学部
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