このような短い一文をここに提示するのは，たまたま手にした数篇の著作が，ちょうど取りくんでいた‘The Open Boat’をとくいくつかのカギとなり，そしてまた，Stephen Graneという作家の解明にひとつの糸口を与えるのではないかと思われたことによる。これらの著作は，オリエンテイションのちがいにもかかわらず，相通ずるものを持つように思われたが，あえて整理を試みず，二群，というよりは一冊と一群，にわけ，それぞれの持つ意味あいを別々にのぞくことにした。それらは，従来，Grane関係の文献の中にはいっていなかった。‘The Open Boat’に思いをこらしつつ，並行して，この作品とは特定の関係のない別の関心がゆるやかに命ずるままにこれらの著作を読み進めた結果，「あるいは……」と思わせる事態になったので，ひとまず公けにして大方の検討と批判とをまつことにした。これも未整理の理由である。
うっとうしいきらいはあるが，ただ見易さのために，引用は本文からはずした。その必要がないと思われた場合は本文中に入れた。外国人による著作はすべて邦訳版を使用した。なお，作品‘The Open Boat’はThe Portable Stephen Grane,ed.with an inttroduction and notes by Joseph Katz(New York: The Viking Press,1969)所収のテクストによった。